こんにちは、risukoです。
小学生の子どもを二人育てています。
子どもたちには本好きになってもらいたいと思い、
小さい頃から絵本の読み聞かせや図書館通いなどをできるだけ続けています。
自分が小さい頃に読んだ本のなかで特に印象に残っているもののひとつに
いわさきちひろさんの絵本があります。
あの美しい水彩画の世界に引き込まれてしまい、同じ物語でも
全く違う独自のストーリーに感じてしまいました。
数十年経った今でも心に残る絵本。
多くの人がそう感じている名作なんですね。
ぜひ子どもたちにも読ませたいと思い、幼児の頃から読み聞かせをしていますが、
反応はごくごく普通。しかし、自分を振り返ってみても幼児の頃は他の絵本との
違いをあまり強く意識してはいませんでした。でもきっと潜在意識として
しっかりと残され、大人になっても忘れられない、または思い出すものこそが名作の証。
記憶の残る絵本になってくれることを期待しています!
では、私が思う、いわさきちひろさんの魅力、おすすめの絵本を紹介させてください。
[box]2018年7月14日(土)~9月9日(日)
生誕100年「いわさきちひろ、絵描きです。」
東京ステーションギャラリーにて開催!
詳しくは→公式HP[/box]
「いわさきちひろさん」はどんな人なの?
画家、絵本作家であるいわさきちひろさんは1918年に福井県に生まれました。
裕福な家庭の3姉妹の長女として東京で成長します。幼少の頃から絵を描くことがとても
上手で才能あふれる子どもだったようです。戦争を体験し、終戦を迎え、ちひろさんは
27歳のときに画家として生きていくことを決意します。
アンデルセン童話の紙芝居を描く仕事をきっかけに絵本画家を志すようになったようです。
31歳の時に小学館児童文化賞を受賞。
41歳の時に『あいうえおのほん』でサンケイ児童出版文化賞受賞。
54歳の時には『ことりのくるひ』がボローニャ国際児童図書展でグラフィック賞を受賞。
日本を代表する絵本画家として世界的にも認知を広め、精力的に創作活動を行っていましたが、
54歳の時に癌を患い、1974年死去(享年55歳)。
1977年、ちひろさんがが22年過ごした自宅兼アトリエ跡にいわさきちひろ絵本美術館
(現ちひろ美術館 東京)開館。 1997年、安曇野ちひろ美術館開館。
私生活では一度目の結婚、離婚を経て31歳の時にのちに弁護士、国会議員となる松本善明氏と結婚。
翌年には男の子が生まれました。いわさきちひろさんが描く子どもたちは
すべて一人息子の猛さんがモデルであると言われているようです。
美しいだけではない、見る人の心を捉える圧倒的な存在感は
我が子への強い愛情を原動力として描かれたからなのでしょうか。
「いわさきちひろの絵本」おすすめ3選と私的ブックレブュー
個人的な感想ではありますが、特に好きな絵本とレブューを紹介させていただきます。
我が子の感想付きです。
にんぎょひめ
アンデルセン、曽野綾子(著) 偕成社
【絵本の概要とレビュー】
悲しくも美しいアンデルセンの名作『にんぎょひめ』。海底に住む人魚姫が人間の王子様に恋をするものの
愛は成就せずに海の泡となって消えていく悲しい結末ですが、無償の愛の美しさを伝える感動作として
語り継がれています。最近は「人魚姫=リトルマーメイド=ディズニーが創ったお話」というような
イメージが出来上がりつつあることに驚いています。でも、いわさきちひろさんの描く「にんぎょひめ」は
西洋のおとぎ話であるはずの物語が日本的にさえ感じるのです。どこかはかなげな水彩画で描かれている
からなのか“もののあはれ”を漂わせています。“もののあはれ”ってしみじみとした情趣や、無常観、
哀愁、平安王朝の女性の心から生まれた美的理念というようなものですね。
曽野綾子さんの、それはそれは美しく抒情的な文章と合わさることで
うっとりとするような余韻に浸れます。私はこの作品が一番好きです。
【子どもの感想】
息子はまったくピンときていませんでした。どうして王子様を刺さずに自分は泡と消えていくことを
選んだのか謎だと言っています。物語の最後に
“かなしみではなく、人を愛したよろこびにつつまれながら”という
フレーズがあるのですが、海の泡となって消えていくにんぎょひめが天国へとのぼっていく
美しいクライマックスで、娘は涙ぐんでいました。よくわからないけれども、
大好きな人は自分の命と引き換えにしても守りたいという愛について
感じるところがあったのかもしれません。女の子の心に響く絵本だと思います。
きれいな絵だねくらいにしか感想を言いませんが、ときどき取り出して自分で読んだり、
私に読んでとリクエストするところをみるとかなり気に入っているようです。
感情をたっぷりと込めて読み聞かせしてあげると喜びます。
読み聞かせは、思い切り感情移入するように読むヴァージョンと、
感情抑え気味に淡々と読み上げるヴァージョンで子どもの反応を試してみたりしていますよ。
ひさの星
斎藤隆介(著) 岩崎書店
【絵本の概要とレビュー】
「昔、秋田の北にひさという無口なおなごわらしがおった」と語り始められる昔の物語。
ひさは無口で心やさしい女の子。犬にかまれそうになった赤ん坊を助けて傷だらけ、
着ているものはボロボロになって母親に叱られても、自分の善行を話そうとしない。
そして最後は大雨の日に溺れそうになっている幼子を助けて水にのまれてしまいます。
子どもの頃にこの本を読んで、なんて悲しく救いのない話なんだろう、ひさは
どうしてそんなことまでするのだろう、なぜ誰もひさのことをわかってあげないのだろうと
憤りを感じたことを覚えています。そして数十年後にも印象に残っている一冊になりました。
当時は、いい人過ぎて愚かに思えたひさという女の子ですが、今では心から美しい
女の子だなと感動できます。子どもたちがどんな捉え方をするのかが興味深い絵本です。
落ち着いた色彩で描かれた『ひさの星』は、静かに輝きつ続ける名作です。
【子どもの感想】
ひさの自己犠牲の精神は、子どもたちにとって少なからずショックを与えたようです。
自分がひさの立場だったらというような考えまでにはまだ及んでいないようですが、
他人のために恐ろしさに立ち向かえるひさの行動は、地球を救うために悪と戦う
スーパーヒーローに憧れる息子にとっては共感が持てるようです。
自分の手柄はいっさい口にしない、無口で内向的な面のある娘は、始終黙って読んでいました。
読み終わってからもあまりコメントはしないのですが、「ひさのお母さんは悲しんだのかな?」と
ドキリとする一言をいいました。母親がひさのことを理解してあげていないことにやるせなさを
感じたようです。可哀想だからもう読みたくないと言っていました。
りゅうのめのなみだ
浜田広介(著) 偕成社
【絵本の概要とレビュー】
人々に恐れられていた竜と、その竜を恐れない不思議な少年の友情の物語。
いわさきちひろさんの描く『りゅうのめのなみだ』は、古い昔話とはひとあじ違う
独特のファンタジックな世界観を創り出しているように感じました。
主人公の少年、竜が格調高く描かれていて“美しい絵本”という印象が残ります。
【子どもの感想】
男の子が好きな本だと思います。少年が主人公なので感情移入しやすいのでしょうか。
幼児から小学校低学年くらいの男の子は虫や動物、自分の好きなおもちゃなどに
とても思い入れをもち大切にしますね。主人公の坊やが嫌われ者の竜を、
自分だけは味方になって守ってあげたいという気持ちに共感できるようです。
坊やの勇気、愛情深さに惹かれるのですね。
「いわさきちひろさん」の魅力を伝えたい
日本が誇る絵本画家のいわさきちひろさんの描く絵本は、今でも多くの子どもたち、大人までをも
魅了しています。日本人の美意識や繊細な心の機微を表現するのにふさわしい気品あるイラストは
子ども時代の読書体験を特別なものにしてくれました!